第27回糖質の代謝の問題解説と難消化性糖質について
今日は第27回82の糖質の問題の解説をします。
第27回82
糖質の代謝に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1) 糖質の重量あたりに発生するエネルギー量は、脂肪より大きい。
(2) グルコースからのATP産生には、ビタミンCが必要である。
(3) 体内のグリコーゲン貯蔵総量は、食事の影響を受けない。
(4) 筋肉グリコーゲンの分解は、アドレナリン(エピネフリン)により抑制される。
(5) 難消化性糖質は、発酵を受けて代謝される。
今回の問題は、今までとは少し違った代謝の問題ですが、どれも基礎栄養学の問題として大切なので、しっかり学習しましょう!
解説
(1) 糖質の重量あたりに発生するエネルギー量は、脂肪より大きい。
三大栄養素が燃焼したときに発生するエネルギーはおよそ、糖質4㎉/g、脂質9㎉/g、たんぱく質4㎉/gです。
よって✖。
エネルギー量は、糖質<脂肪です。
ちなみにこれは生理的燃焼値(アトウォーター係数)であり、物理的燃焼値ではどの栄養素も少し高くなりますが、糖質<脂肪は変わりません。
(2) グルコースからのATP産生には、ビタミンCが必要である。
グルコースの代謝に必須のビタミンはビタミンB1!
よって✖。
その他にも必要なビタミンはあるのですが、問題で糖質代謝に関連するビタミンとくればビタミンB1と覚えておいてよいでしょう。
(3) 体内のグリコーゲン貯蔵総量は、食事の影響を受けない。
グリコーゲンはグルコースの貯蔵形態ですが、これは一定量までは食事が少なければ少ない量しか貯蔵されないし、多ければたくさん貯蔵されます。
よって✖。食事の影響を受けます。
ちなみに、一定量と書いたのはグリコーゲンの貯蔵量には限界があります。限界を超えた量のグルコースがやってきた場合は、脂肪となって蓄えられます。
だから、毎日毎日多く食べすぎたら太る(脂肪がつく)のです( ^)o(^ )
(4) 筋肉グリコーゲンの分解は、アドレナリン(エピネフリン)により抑制される。
グリコーゲンを分解するホルモンとして覚えておくべきものにアドレナリンやグルカゴンがあります。
アドレナリンはグリコーゲンを分解するので、分解抑制ではないですね。
よって✖。
筋肉グリコーゲンの分解は、アドレナリン(エピネフリン)により促進されます。
(5) 難消化性糖質は、発酵を受けて代謝される。
これが正解〇!この通りです。
ちなみに 難消化性糖質とは?読んで字のごとく消化されにくい糖質です。
糖アルコール(キシリトールエリスリトールなど)や食物繊維があります。
普通は糖質(でんぷんなど)を食べると、消化→吸収(小腸)されエネルギーとなりますが、難消化性糖質は小腸で吸収されません。多くが大腸の腸内細菌のえさになり、腸内細菌により発酵をうけ吸収・代謝されます。
また、難消化性糖質により腸内環境の改善や虫歯予防の効果が期待されています。
いかがでしたか?
難消化性糖質についてはまた問題が登場すると思うので、その時にもまた思い出しましょう!
勉強は何度も解いて、復習して覚えるべし☆
第28回基礎栄養学:糖質の栄養に関する問題の解説
今日は第28回の問題を見てみましょう。
第28回82
糖質の栄養に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1) 空腹時には、グルコースからの脂肪酸合成が促進される。
(2) 空腹時には、アミノ酸からのグルコース合成が抑制される。
(3) 糖質摂取量の増加は、ビタミンB₁必要量を減少させる。
(4) 筋肉グリコーゲンは、脳のエネルギー源と して利用される。
(5) 急激な運動時には、グルコースから乳酸が生成される。
今回も比較的よく出る問題だと思います。
わからなかった問題はしっかり理解して、何度も解いてみましょう!
解説
(1) 空腹時には、グルコースからの脂肪酸合成が促進される。
空腹時は脂肪が分解し、中性脂肪を構成しているグリセロールは糖新生へ(グルコースとなる)、脂肪酸はエネルギー源またはケトン体として使われます。
よって✖。
空腹時は脂肪酸合成は抑制されます。
単純に、満腹の時またはグルコースが大量な時は、脂肪がつくられる(=脂肪酸合成も促進)と考えたらわかりやすいかな。
(2) 空腹時には、アミノ酸からのグルコース合成が抑制される。
これは糖新生と考えられます。空腹時つまりグルコースがない場合はアミノ酸や乳酸からグルコースがつくられます。
よって✖。
空腹時には、アミノ酸からのグルコース合成が促進される。
(3) 糖質摂取量の増加は、ビタミンB₁必要量を減少させる。
ビタミンB1は糖質の代謝に必要なビタミンです。
よって✖。
ビタミンB₁必要量を増加させます。
(4) 筋肉グリコーゲンは、脳のエネルギー源として利用される。
脳のエネルギー源はグルコース!飢餓時などではケトン体がエネルギー源となります。
筋肉グリコーゲンはグルコース6-ホスファターゼがないのでグルコースにはなれない!(赤字の事項は何回も出るので覚えておくように)つまり、筋肉グリコーゲンは血糖(血液中のグルコース)になれません。
よって✖。
筋肉グリコーゲンは脳のエネルギ-に利用されません。
(5) 急激な運動時には、グルコースから乳酸が生成される。
急激な運動時とは、無酸素運動のことです。
解糖系を思い出してほしいのですが、解糖系ではグルコースから乳酸またはピルビン酸ができました。乳酸ができるのは酸素のないとき。
つまり、無酸素運動の時はグルコースから乳酸が生成されます。
よって正解〇!
答え(5)
第29回血糖の調節についての問題解説
糖質と脂質の代謝についての人体の構造分野の過去門解説がひと段落したところで、今日から基礎栄養学分野の糖質・脂質代謝に関係する問題を解いていきます。
人体の分野の生化学とつながる部分も多いので、続いて説明したほうがいいかなと思いました。
基礎栄養学では細かい酵素の名前・場所などよりも、全体的にどのような代謝が行われているか、などが問われている問題が多いです。
では、基礎栄養学の過去問を解いていきましょう!
第29回82
血糖の調節に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1) 筋肉グリコーゲンは、分解されて血中グルコースになる。
(2) 脂肪酸は、グルコースの合成材料になる。
(3) 乳酸は、グルコースの合成材料になる。
(4) グルカゴンは、血糖値を低下させる。
(5) インスリンは、血中グルコースの脂肪組織への取り込みを抑制する。
早速ですが、解説いきます!
解説
(1) 筋肉グリコーゲンは、分解されて血中グルコースになる。
この問題は本当によく出ます!のでしっかり理解して覚えておきましょう。
主に肝臓と筋肉でのグリコーゲン利用の違いについて聞かれます。
重要なのはグルコース6ホスファターゼが肝臓にはあるが、筋肉にはない。ということです。
グルコース6ホスファターゼはグルコース6リン酸からグルコースの反応を触媒する酵素でしたね。
グリコーゲンが分解して、グルコース6リン酸となった後、グルコース6ホスファターゼがある肝臓ではグルコースになることができますが、酵素がない筋肉ではグルコースになることができません。
よって、肝臓ではグリコーゲンが分解するとグルコースとなり血中へ分泌され(血糖となる)ますが、筋肉ではピルビン酸へと進み、その後クエン酸回路に入りATP(筋肉を動かすためのエネルギー)となります。
よってこの問題の答えは✖。
筋グリコーゲンはグルコース6ホスファターゼがないためグルコースとなって血中にいけません。
(2) 脂肪酸は、グルコースの合成材料になる。
この問題も国家試験によく出る問題です。
脂肪酸は分解するとアセチルCoAになりましたね。
このアセチルCoA からピルビン酸に変換する酵素がないため、グルコースになることができません。
よって✖。
脂肪酸のβ酸化で生じたアセチルCoAはTCA回路におくられてATPになるかケトン体の合成に使われます。
(3) 乳酸は、グルコースの合成材料になる。
糖以外の成分からグルコースをつくる代謝経路を糖新生と言いました。
糖新生の説明でも書いたように、乳酸は糖新生の材料になります。
よって正解〇。
(4) グルカゴンは、血糖値を低下させる。
これも、よく出る基礎的な事項です。
インスリンとグルカゴンは反対の役目。
インスリンは血糖値を低下させるのに対し、グルカゴンは血糖値を上昇させます。
よって✖。
(5) インスリンは、血中グルコースの脂肪組織への取り込みを抑制する。
インスリンは血糖値が高いときに低下させようと、血中から細胞内に糖を取り込みます。当然脂肪組織への糖の取り込みも増加します。
よって✖。
インスリンは血中グルコースの脂肪組織への取り込みを促進します。
答え(3)
今回の問題は比較的、よく出る問題ばかりでした。
これらの問題は基礎栄養学の必須事項なのでしっかり復習&自分で解けるまで何度も繰り返し学習しましょう!