リポたんぱく質と第26回脂質の代謝の問題のやさしい解説
では、第26回人体の分野の脂質代謝の問題を解いてみましょう。
第26回27
脂質とその代謝に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)HDLの粒子径は、キロミクロンより大きい。
(2)肝臓の LDL受容体は、HMG-CoA還元酵素の阻害に伴って減少する。
(3)インスリンは、リポたんぱく質リパーゼ活性を低下させる。
(4)リポたんぱく質のコア部分は、リン脂質からなる。
(5)スカベンジャー受容体は、酸化 LDLを結合する。
正解が分かりましたか?
今回の問題はリポたんぱく質に関する問題が多いですね。
最初にリポたんぱく質の基礎知識を説明してから各設問の解説をしたいと思います。
リポたんぱく質とは?
水に溶ない脂質が血中に溶けて運搬されるには、リポたんぱく質である必要があります。リポたんぱく質は不溶の中性脂肪やコレステロール、可溶のたんぱく質(アポたんぱく質)、リン脂質などから構成されています。
血中に入った脂質は、リポたんぱく質として血中に溶けて運搬されているのですね。
このリポたんぱく質は大きく分けて4種類あります。
- カイロミクロン(CM):TGが8割。
- VLDL(超低比重リポタンパク):TGが半分以上
- LDL(低比重リポタンパク):コレステロールが半分を占め最も多い
- HDL(高比重リポタンパク):たんぱく質が半分を占め最も多い
おさらいしたところで、答えとともに解説いきます!
解説
(1)HDLの粒子径は、キロミクロンより大きい。
粒子の大きさは上記で説明したリポたんぱく質の1から4の順に小さくなります。
よってHDLの粒子径はキロミクロンより小さい。答えは✖。
(2)肝臓の LDL受容体は、HMG-CoA還元酵素の阻害に伴って減少する。
HMG-CoA還元酵素はコレステロール合成の律速酵素です。
この酵素が阻害されると、当然コレステロール合成も阻害されます。
そうすると、もっと細胞内にコレステロールがほしい!となって血中から多くのコレステロールを取り込もうとします。
よってLDL受容体は増加します。答えは✖。
(3)インスリンは、リポたんぱく質リパーゼ活性を低下させる。
リポたんぱく質リパーゼ(LPL)は血中の中性脂肪(食事で入ってきた中性脂肪)を脂肪酸とグリセロールに分解し細胞に取り込む酵素です。
脂肪組織ではインスリンはLPL活性を高め、脂肪の貯蔵をupさせます。
インスリンは血糖が多いときに出るホルモンですよね、血糖が高いときは糖や脂肪の取り込みも盛んになります。
取り込みを盛んにするには、脂肪細胞のLPL活性を高めて積極的に脂肪の材料である脂肪酸を取り込まなければなりません。
ちなみに脂肪は分解して取り込みますが、取り込んだ後再合成されて再び脂肪となり貯蔵されます。
よって✖。
ただし、あくまでも脂肪組織の話で、筋肉組織だとインスリンはLPL活性を低下させます。よって筋肉組織だと〇になってしまいます💦
この設問は部位が指定されていないので、答えは△ですが、問題作成者の方はおそらく脂質代謝の問題なので、脂肪細胞の話のことを問題にしたと思われます。
(4)リポたんぱく質のコア部分は、リン脂質からなる。
リポたんぱく質血中に溶けることができるように、外側が親水性、内側(コア部分)が疎水性となっています。
大福で例えると、あんこ部分にはTGやコレステロールエステルが、皮の部分にはアポたんぱく質やリン脂質などになります。
よって✖。
リン脂質は外側、コア部分はTGやコレステロールエステルです。
(5)スカベンジャー受容体は、酸化 LDLを結合する。
スカベンジャー受容体とは、マニアックなものがでてきましたね。
この受容体知っていなくても大丈夫な気がしますが、(過去5年でここだけだから。たぶん)余力のある人だけ覚えましょう。
この受容体はマクロファージなどの表面に存在し、酸化されたLDLを認識して細胞内へとりこむ働きをします。
よって〇!
いかがですか?
今回の問題はなかなか難しいですね。
ここまでで人体の脂質・糖質代謝の問題の解説は終了します。
次回からは、この流れで基礎栄養学の脂質・糖質の勉強をしていこうかなと思います!