リポたんぱく質リパーゼとホルモン感受性リパーゼの違いと28回食後代謝の解説
今日も食後の脂質代謝の問題解説です。
続けて解いている人は、同じような問題があるなぁと気づいているのではないでしょうか?
早速解いてみましょう!
28-83 食後の脂質代謝に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1) エネルギー源としての脂肪酸の利用が高まる。
(2) 脂肪組織から放出される脂肪酸量は増加する。
(3) リポたんぱく質リパーゼの活性が低下する。
(4) 血中のカイロミクロン(キロミクロン)が増加する。
(5) 肝臓からのVLDLの分泌が減少する。
今回は 前回までのブログ解説にはない、リポたんぱく質リパーゼが登場してきました。
これも、栄養学では必須の言葉なので、解説時に詳しく書いておきますね。
解説
(1) エネルギー源としての脂肪酸の利用が高まる。
これは空腹時のことですね。空腹時はエネルギー源としてグルコースが不足している状態ですから、脂肪酸のエネルギー源としての利用が高まります。
が、この設問は食後のことなので、間違い✖。
(2) 脂肪組織から放出される脂肪酸量は増加する。
これも空腹時についてです。
よって間違い✖。
(3) リポたんぱく質リパーゼの活性が低下する。
リポたんぱく質リパーゼ(LPL)とは、中性脂肪を脂肪酸とグリセロール(グリセリン)に分解する酵素のことです。
LPLは血中の中性脂肪に働き、分解した脂肪酸を細胞内に取り込む酵素です。
つまり、食後カイロミクロンがたくさん産生され血中を移動していますが、そのカイロミクロンにLPLが働き、脂肪酸を取り出し脂肪組織に取り込むよう働き、脂肪組織で脂肪酸は再び脂肪になり貯蔵されるのです。
なので、食後LPL活性は高くなる⇒細胞内にどんどん脂肪酸を取り込み、脂肪として貯蔵されるのです。
よってこの設問は間違い✖。
正しくは、(食後)リポたんぱく質リパーゼの活性が上昇する。です。
ここで対比して覚えてほしいのが、ホルモン感受性リパーゼです。
この酵素も中性脂肪を脂肪酸とグリセロールに分解する酵素ですが、こちらは、脂肪組織に貯蔵されている中性脂肪に働き、分解し、分解された脂肪酸はエネルギー源などに利用されます。
つまり、ホルモン感受性リパーゼは空腹時に働く酵素といえます。
同じ作用(中性脂肪→脂肪酸+グリセリンと分解する)でも、働きかける場所・時が違うと酵素が異なるので、注意です!
(4) 血中のカイロミクロン(キロミクロン)が増加する。
食後のことなので、これが正解〇!
この通りです。
(5) 肝臓からのVLDLの分泌が減少する。
VLDLは今までに少し解説しましたが、リポたんぱく質の一つです。
食事からの脂肪はカイロミクロンとなりますが、カイロミクロンは肝臓に運ばれてVLDLとなり、全身を巡ります。
カイロミクロンが外因性(食事由来)なのに対し、VLDLは内因性(体内で合成)と言って区別されます。
食後はどんどんカイロミクロンが産生され、肝臓に入ってきますので、当然VLDLも多くなります。
よってこの設問は間違い✖。
正しくは、(食後)肝臓からのVLDLの分泌が増加する。です。
正解(4)
VLDLなどのリポたんぱく質についてはもう少し解説したいので、後日問題解説の時にさらに詳しい解説をつけたいな~、と思います☆