第30回20 核酸の問題、PCR法のくわしい解説
今日は第30回核酸の解説をします。
核酸の分野も重要なところは解説済みですので、過去の解説と照らし合わせ、不十分だったところはさらに詳しく解説していきます。
では、まず問題
20 核酸の構造と機能に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法には、プライマーが必要である。
(2)プロモーターは、mRNAの移動に必要である。
(3)rRNA(リボソームRNA)は脂肪酸を運ぶ。
(4)イントロンは、タンパク質に翻訳される。
(5)DNA分子中のシトシンに対応する相補的塩基は、アデニンである。
答えがわからなかった人は以下の解説へGO!
解説
(1)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法には、プライマーが必要である。
ポリメラーゼ連鎖反応法は頻出問題でしたね。
PCR反応は、DNAポリメラーゼを利用して特定の領域のDNAを増幅させる実験手法のこと。ですが、この反応にはプライマーという核酸の断片が必要です。
プライマーをもとに、欲しいDNAを自由に作成することができます。
よって、この設問が正解〇!
余談ですが、このPCR法は現在とても頻繁に行われています(リアルタイムPCR法など)。ですので、管理栄養士国家試験問題作成に関わる人は、ほとんど大学の先生なので、先生方自身の研究でこの手法を用いていることが多いです。自分の研究で行っていることは身近に感じられ、問題にも出しやすいかなと思います!
よって、これからもPCR法はよく出るのではないかと思うので、少し詳しく以下に載せています。
お時間がある人、詳しく学びたい人はチェックしてください☆
私たちは約60兆個の細胞から成り立っていますが、その細胞の中の染色体という部分に、DNAは存在しています。よく設計図と例えられます。
遺伝子診断などで、ある特定の部位を調べたい!というときには、少量のDNAを増幅し、必要な量のDNAを得ます。そして、診断に用いるのですが、このDNAを増幅させる手法がPCR法です↓。
絵:http://first-genetic-testing.com/genetic-testing/flow.html
1、2本鎖のDNAを 熱を加えることにより、1本鎖に分解し、そこに
2、増幅させたい領域のプライマーを結合し
3、DNAポリメラーゼによって、合成が開始される。
4、これを繰り返し、増幅させたい部位のDNAがどんどんできる。
といった具合いになります。
こうやって、髪の毛からとか爪からとか少量のDNA断片から、確認したいDNAを増幅して検査・診断に用いるのです。
(2)プロモーターは、mRNAの移動に必要である。
プロモーターとは遺伝子の上流域に存在し、DNAからmRNA へ転写を開始する領域のことです。
よって、間違い✖。mRNAの移動とは関係ないです。
ちなみに、DNAからmRNAへと遺伝情報を転写しますが、この転写を調節する領域には、転写を始めるプロモーター、転写を活性化するエンハンサー、また、逆に転写を抑制するサイレンサーなどと呼ばれる部分もあります。
(3)rRNA(リボソームRNA)は脂肪酸を運ぶ。
rRNAはたんぱく質合成の場であり、特に何も運んできません。
tRNA(トランスファーRNA)はrRNAにアミノ酸を運んできますが、この問題がtRNAであっても間違い✖。
ちなみにこの問題、第28回にtRNAは脂肪酸を運ぶ(答えは✖)と、出ていました。脂肪酸は運んできませんね。
(4)イントロンは、タンパク質に翻訳される。
まず、答えから。
この問題は間違い✖です。
正しくはエクソンはたんぱく質に翻訳にされるです。
エキソン(エクソン)・イントロンについては、今までかけなかったですが知っておいたほうが良い基礎知識です。
DNAの情報をmRNAに転写すると言いましたが、このmRNAはまだ不完全です。
不完全というのは、配列に必要なアミノ酸情報があるエクソンという部分と、不必要なイントロンという部分が含まれているからです。
不要な部分は切り捨てられ(スプライシングという)、必要な情報を持ったエクソンのみ結合し、翻訳されます。
イントロン=イらントロぅン (いらんとろう)などと無理矢理覚えておきましょう☆
(5)DNA分子中のシトシンに対応する相補的塩基は、アデニンである。
相補的塩基は覚えるしかないと書きました。
A(アデニン)はT(チミン)またはU(ウラシル)
G(グアニン)はC(シトシン)とです!
よってシトシンに対応するのはグアニンなので間違い✖!
正解(1)
いかがでしたか?
少し解説が詳しくなったので、より詳しく学びたい人はきちんと読んで、頭がパンクしそうな人はさら~っと読んでくださいね。