第29回血糖の調節についての問題解説
糖質と脂質の代謝についての人体の構造分野の過去門解説がひと段落したところで、今日から基礎栄養学分野の糖質・脂質代謝に関係する問題を解いていきます。
人体の分野の生化学とつながる部分も多いので、続いて説明したほうがいいかなと思いました。
基礎栄養学では細かい酵素の名前・場所などよりも、全体的にどのような代謝が行われているか、などが問われている問題が多いです。
では、基礎栄養学の過去問を解いていきましょう!
第29回82
血糖の調節に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1) 筋肉グリコーゲンは、分解されて血中グルコースになる。
(2) 脂肪酸は、グルコースの合成材料になる。
(3) 乳酸は、グルコースの合成材料になる。
(4) グルカゴンは、血糖値を低下させる。
(5) インスリンは、血中グルコースの脂肪組織への取り込みを抑制する。
早速ですが、解説いきます!
解説
(1) 筋肉グリコーゲンは、分解されて血中グルコースになる。
この問題は本当によく出ます!のでしっかり理解して覚えておきましょう。
主に肝臓と筋肉でのグリコーゲン利用の違いについて聞かれます。
重要なのはグルコース6ホスファターゼが肝臓にはあるが、筋肉にはない。ということです。
グルコース6ホスファターゼはグルコース6リン酸からグルコースの反応を触媒する酵素でしたね。
グリコーゲンが分解して、グルコース6リン酸となった後、グルコース6ホスファターゼがある肝臓ではグルコースになることができますが、酵素がない筋肉ではグルコースになることができません。
よって、肝臓ではグリコーゲンが分解するとグルコースとなり血中へ分泌され(血糖となる)ますが、筋肉ではピルビン酸へと進み、その後クエン酸回路に入りATP(筋肉を動かすためのエネルギー)となります。
よってこの問題の答えは✖。
筋グリコーゲンはグルコース6ホスファターゼがないためグルコースとなって血中にいけません。
(2) 脂肪酸は、グルコースの合成材料になる。
この問題も国家試験によく出る問題です。
脂肪酸は分解するとアセチルCoAになりましたね。
このアセチルCoA からピルビン酸に変換する酵素がないため、グルコースになることができません。
よって✖。
脂肪酸のβ酸化で生じたアセチルCoAはTCA回路におくられてATPになるかケトン体の合成に使われます。
(3) 乳酸は、グルコースの合成材料になる。
糖以外の成分からグルコースをつくる代謝経路を糖新生と言いました。
糖新生の説明でも書いたように、乳酸は糖新生の材料になります。
よって正解〇。
(4) グルカゴンは、血糖値を低下させる。
これも、よく出る基礎的な事項です。
インスリンとグルカゴンは反対の役目。
インスリンは血糖値を低下させるのに対し、グルカゴンは血糖値を上昇させます。
よって✖。
(5) インスリンは、血中グルコースの脂肪組織への取り込みを抑制する。
インスリンは血糖値が高いときに低下させようと、血中から細胞内に糖を取り込みます。当然脂肪組織への糖の取り込みも増加します。
よって✖。
インスリンは血中グルコースの脂肪組織への取り込みを促進します。
答え(3)
今回の問題は比較的、よく出る問題ばかりでした。
これらの問題は基礎栄養学の必須事項なのでしっかり復習&自分で解けるまで何度も繰り返し学習しましょう!