脂肪酸の合成・分解と第27回脂質の代謝についての問題解説
今日は第27回の脂質代謝について詳しく見ていきましょう。
第27回26
脂質の代謝に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)コレステロールは、身体活動のためのエネルギー源となる。
(2)脂肪酸のβ酸化は、脂肪酸を水と二酸化炭素に分解する過程である。
(3)肝細胞内で生成したクエン酸は、脂肪酸の合成材料となる。
(4)アラキドン酸は、オレイン酸から産生される。
(5)骨格筋細胞は、脂肪酸をグルコースに変換する作用をもつ。
この問題の正解を見つけるのは少し難しいですが、これは違うというところを明確にしていきましょう。
解説
(1)コレステロールは、身体活動のためのエネルギー源となる。
これは、有名?なことで、コレステロールはエネルギー源になりません。
よって✖。
よく太った、皮下脂肪がついた。といいますが、これはコレステロールではなく、中性脂肪がついたことです。同じ脂質でも、合成・分解経路など違ってきますが、これは問題に出るたびに詳しく話します。
(2)脂肪酸のβ酸化は、脂肪酸を水と二酸化炭素に分解する過程である。
これは、以前説明しました。脂肪酸⇒アシルCoA⇒アセチルCoAでしたので、脂肪酸をアセチルCoAに分解ということで✖。
アセチルCoAは糖質の代謝でも登場しました。クエン酸回路に入る前です!
なので、結果的にβ-酸化で生じたアセチルCoAはクエン酸回路で代謝され、水と二酸化炭素になりますが、この問題はβ-酸化は、と問われているのでアセチルCoAまでです。
合わせてβ-酸化の場所(ミトコンドリア)をもう一度思い出しておきましょう!
(3)肝細胞内で生成したクエン酸は、脂肪酸の合成材料となる。
この問題は少し説明が長くなります💦今までの知識を集めつつ説明していきます。
復習がてら、理解できるとこまで読んでくださいね。
脂肪酸の合成は簡潔に書くと
アセチルCoA⇒マロニルCoA⇒⇒⇒脂肪酸と基礎知識で説明しました。
もう一つ糖質代謝を思い出してください。
糖質⇒解糖系⇒TCA回路⇒電子伝達系⇒ATP
そして、それぞれの場所も思い出してください。
解糖系は細胞質ゾル、それ以降はミトコンドリアです。
脂肪酸合成は細胞質ゾル、β-酸化はミトコンドリアでした。
これらを組み合わせてもう一度考えてみると、解糖系でできたピルビン酸からアセチルCoA→クエン酸回路(TCA回路)と代謝が進行しますが、ピルビン酸は細胞質ゾル、アセチルCoAはミトコンドリアで生成される。しかし脂肪酸合成の場は細胞質ゾル。
つまり、ミトコンドリアで生成されたアセチルCoAを脂肪酸合成に利用するなら細胞質へ移動しなければならないのです。
しかし、アセチルCoAはミトコンドリアを通過できません。(CoAの分子量が大きい)
なので、アセチルCoAが細胞質へ行くために、クエン酸となってミトコンドリアを通過し細胞質へ移動するのです。
そして、ふたたび細胞質でクエン酸からアセチルCoAができて脂肪酸合成が進みます。
なので,結果的にクエン酸は脂肪酸合成の材料であるのでこの問題は正解〇になります。
ちなみに場所は特に肝細胞内に限りませんよ~
(4)アラキドン酸は、オレイン酸から産生される。
簡潔に書くとアラキドン酸はリノール酸から生成されるので答えは✖です。
<暗記事項>
リノール酸からアラキドン酸
α‐リノレン酸からエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸
ができます。
そしてリノール酸、α‐リノレン酸、アラキドン酸を必須脂肪酸といいます。
アラキドン酸はリノール酸から生成されるのですが、体内でつくられただけでは必要量を賄えないので必須脂肪酸(体内で合成されず食事からとらなければならない脂肪酸)と位置付けられています。
(5)骨格筋細胞は、脂肪酸をグルコースに変換する作用をもつ。
骨格筋細胞に限りませんが、 脂肪酸はグルコースに変換できません。よって✖。
糖質以外の物質からグルコースを生成することを糖新生といいましたが、脂肪酸は糖新生の材料にはなりません。
脂肪酸のβ酸化でアセチルCoAになりますが、これからグルコースができるのではなく、TCA回路におくられてATPになります。またはケトン体の合成に使われます。
基礎栄養学の問題にも同じ設問が出てくるので、その時にも解説を詳しくします。
今日は解説が少し長くなりました💦
脂肪酸についても詳しく説明しようと思ったのですが、基礎栄養学分野でも出てきそうなので暗記にとどめました。
最後まで読んでくれた皆さん、ありがとうございました☆